ここでは僕の論文の紹介をしています。
論文そのものは掲載雑誌の学会に著作権が委譲されていますので、ここでは学会発表時のスライドを中心に研究に至る経緯等を分かり易く説明しています。
歯性感染が誘因もしくは増悪因子と考えられた放射線性骨壊死の1症例
僕が初めて書いた論文です。論文要旨はこちら。
当時の学会スライドが在りませんでした。お手数ですが全文を参照されたい方は新潟歯学会に入会ください。
この患者さんは放射線粘膜炎と言うよりは唾液分泌低下症による粘膜の痛みと歯磨き不足による歯周炎による歯肉の痛みにより歯磨きをなかなかしてもらえず、歯磨き不足による口腔内細菌の増加によって粘膜炎と歯周炎の増強が起き、
細菌増加→疼痛増加→疼痛により歯磨き不足→細菌増加→疼痛増加→疼痛により歯磨き不足→・・・・・
と言う悪循環の典型例のような方でした。
歯磨きの重要性をしつこくお話ししたのですがうまく伝わらず最終的には放射線骨壊死に至ってしまいました。
その後、衛生士学校の学生さんに歯磨き指導を担当させたところ翌週には今まで見た事の無いほど歯磨きをされてきて驚いた経験が今でも鮮明に記憶に残っています。当然、疼痛や歯肉炎が軽減し患者さん本人も驚いていました。
歯磨きをしてきた理由をお聞きすると「こんなに可愛いお嬢さんに私の汚い口の中をお見せするのは申し訳ないから」とおっしゃっていました。放射線骨壊死予防のための歯科管理の大切さを実感すると同時に、歯磨き指導の難しさを痛感しました。
実際は下顎骨に116〜131Gy投入され過線量でもあるのですが耐用線量が下顎骨より低い粘膜よりも顎骨障害の方が広範で重篤であり放射線骨壊死のリスクファクターである歯周炎の状態が高度であったことから歯性感染(歯周炎)が誘因もしくは増悪因子であろうと結論づけました。この患者さんは歯周炎の管理が良好に行われていたならば、これ程、重篤で広範な放射線骨壊死にはならなかったと思います。